2021年4月の労災ニュース:新たな死傷者数、主な書類送検事案

4月期に認定された死者数43人、死傷者数1万1204人

 5月20日、厚労省が5月集計分の労働災害発生状況を公表し、4月6日~5月7日(以下「4月期」)までの1ヶ月で、2021年1月以降の労災事故について、新たに死者数43人、死傷者数1万1204人が明らかになりました。累計で2021年の労災死者数は現在183人となっており、前年の同時期の203人よりは9.9%減少しています。一方で死傷者数は3万6389人と、前年同時期の2万7665人より8724人、31.5%増加しています。うち5005人は主に感染症による労災ですが、それを省いても3700人程度増加しています。

4月期の主な書類送検事案

■請負会社が元請け会社に労災かくしを提案

 4月20日、埼玉労働局・川越労働基準監督署が、建設会社ほか1名、下請け業者を労働安全衛生法違反で書類送検しました。工場新築工事現場で、建設会社の従業員が作業中に1.4メートルの段差に転落して、腰を骨折しました。しかし、労働基準監督署長に対して、社内の事務所兼資材置き場で脚立から転落して負傷したという虚偽の内容の報告を行い、労働安全衛生規則第97条(労働者死傷病報告)などに違反した疑いです。下請け業者が建設会社の代表取締役に、虚偽の内容での報告を働きかけていたとされています。

 労働安全衛生規則第97条(労働者死傷病報告)には、次のように定められています。なお、「遅滞なく」とは、厚労省によれば「正当又は合理的な理由がある場合を除き、事情の許す限り最も速やかに」とされ、 「概ね1週間から2週間以内程度」と解されています。

 事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第二十三号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

労働安全衛生規則第97条(労働者死傷病報告)

■誘導員を配置せず、振動トレーラーに轢かれて労働者が死亡

 4月20日、大阪府・西野田労働基準監督署により、建設会社ほか1名を労働安全衛生法違反で書類送検しました。戸建分譲住宅新築工事に伴う道路補修工事現場において、危険があったにもかかわらず誘導員を配置せず、立ち入り禁止による接触防止措置も講じず、労働安全衛生規則第158条(接触の防止)などに違反した疑いです。アスファルトの舗装作業中、運転中の振動ローラーに轢かれて従業員が死亡しています。

 労働安全衛生規則第158条(接触の防止)には、次のように定められています。

 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、運転中の車両系建設機械に接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に、労働者を立ち入らせてはならない。ただし、誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させるときは、この限りではない。

労働安全衛生規則第158条(接触の防止)

■作業床を設置せず、樹木の剪定中に墜落死

 4月23日、愛知労働局・津島労働基準監督署が、造園会社ほか1名を、労働安全衛生法違反で書類送検しました。樹木剪定作業の現場で、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けるか、防網を張り、墜落制止用器具を使用するなどの墜落防止措置を講じず、労働安全衛生規則第518 条(作業床の設置等)などに違反した疑いです。従業員が剪定作業中、高さ地上約4メートルの樹上から墜落死しています。

 労働安全衛生規則第518 条(作業床の設置等)では、次のように定めています。

 事業者は、高さが2メートル以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行なう場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない。

2 事業者は、前項の規定により作業床を設けることが困難なときは、防網を張り、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。

労働安全衛生規則第518 条(作業床の設置等)

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