2023年1月の労災ニュース:新たな死傷者数、主な書類送検事案
1月期に認定された死者数29人、死傷者数2万3274人
2月16日、厚労省が1月集計分の労働災害発生状況を公表し、1月11日~2月7日(以下「1月期」)までの1ヶ月で、2022年1月以降12月末までの労災事故について、新たに死者数29人、死傷者数2万3274人が明らかになりました。
累計で2022年の労災死者数は現在747人となっており、前年の同時期の818人より8.7%減少しています。
一方で死傷者数は25万9938人と、前年同時期の14万3156人より11万6782人、81.6%増加しています。うち主に感染症による労災は、今年度1月期は13万5468人、前年度同時期は1万9704人ですが、それを省くと1018人程度増加しています。
また、1月期の1ヶ月で、2023年1月以降1月末までの労災事故について、新たに死者数32人、死傷者数5968人が明らかになりました。
累計で2023年の労災死者数は現在32人となっており、前年の同時期の56人より42.9%減少しています。
一方で死傷者数は5968人と、前年同時期の5354人より614人、11.5%増加しています。うち主に感染症による労災は、2023年度1月期は2116人、2022年度同時期は527人ですが、それを省くと975人程度減少しています。
1月期の主な書類送検事案
■鉄筋の下敷きになり、10代労働者死亡
1月18日、滋賀労働局・大津労働基準監督署が、建設会社と同社の現場責任者を書類送検しました。高速道路の延伸工事中に、橋脚工事の現場において1組約470キロの鉄筋25組が落下し、10代の労働者が下敷きになって死亡しました。同社は、物体の落下の危険があるにもかかわらず、立ち入り禁止区域を設けるなどの対策を講じなかったとして、労働安全衛生法第21条、労働安全衛生規則第537条に違反した疑いによります。
労働安全衛生規則第537条には、次のように定められています。
事業者は、作業のため物体が落下することにより、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、防網の設備を設け、立入区域を設定する等当該危険を防止するための措置を講じなければならない。
労働安全衛生規則第537条(物体の落下による危険の防止)
■「社内でけがをした」と虚偽の報告(労災かくし)
1月24日、神奈川労働局・川崎北労働基準監督署が、外構工事会社と同社の会長、社長を書類送検しました。外構フェンス改修工事を請け負ったマンションにおいて、コンクリート製の支柱基礎を壊していた労働者が左手をハンマーで叩いて、親指の付け根を骨折しました。それにもかかわらず、共謀して「社内でけがをした」と発生場所について虚偽の労働者死傷病報告書を提出したとして、労働安全衛生法第100条、労働安全衛生規則第97条に違反した疑いによります。
労働安全衛生規則第97条には、次のように定められています。
事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第二十三号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
2 前項の場合において、休業の日数が四日に満たないときは、事業者は、同項の規定にかかわらず、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの期間における当該事実について、様式第二十四号による報告書をそれぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
労働安全衛生規則第97条(労働者死傷病報告)
■木の下敷きになりベトナム人労働者死亡
2月6日、熊本労働局・熊本労働基準監督署が、土木工事会社と同社の役員2名を書類送検しました。同社の敷地内において、チェーンソーで胸高直径39センチの木を伐採していたところ、木が縦方向に裂けて途中で折れ、作業していた20代のベトナム人労働者が下敷きとなって死亡しました。同社は、胸高直径20センチ以上の木を伐採する際、木を倒す方向に切り込みを入れる「受け口」をつくるなどの危険防止措置を講じなかったとして、労働安全衛生法第21条、労働安全衛生規則第477条に違反した疑いによります。
労働安全衛生規則第477条には、次のように定められています。
事業者は、伐木の作業(伐木等機械による作業を除く。以下同じ。)を行うときは、立木を伐倒しようとする労働者に、それぞれの立木について、次の事項を行わせなければならない。
一 伐倒の際に退避する場所を、あらかじめ、選定すること。
二 かん木、枝条、つる、浮石等で、伐倒の際その他作業中に危険を生ずるおそれのあるものを取り除くこと。
三 伐倒しようとする立木の胸高直径が二十センチメートル以上であるときは、伐根直径の四分の一以上の深さの受け口を作り、かつ、適当な深さの追い口を作ること。この場合において、技術的に困難である場合を除き、受け口と追い口の間には、適当な幅の切り残しを確保すること。
2 立木を伐倒しようとする労働者は、前項各号に掲げる事項を行わなければならない。
労働安全衛生規則第477条(伐木作業における危険の防止)