2022年7月の労災ニュース:新たな死傷者数、主な書類送検事案
7月期に認定された死者数72人、死傷者数2万4017人
8月18日、厚労省が7月集計分の労働災害発生状況を公表し、7月8日~8月8日(以下「7月期」)までの1ヶ月で、2022年1月以降7月末までの労災事故について、新たに死者数72人、死傷者数1万6496人が明らかになりました。
累計で2022年の労災死者数は現在395人となっており、前年の同時期の397人より0.5%減少しています。
一方で死傷者数は9万8181人と、前年同時期の7万2505人より2万5676人、35.4%増加しています。うち主に感染症による労災は、今年度7月期は3万5546人、前年度同時期は1万458人ですが、それを省くと588人程度増加しています。
7月期の主な書類送検事案
■技能実習生がパイプ状の部品を投げ渡され負傷
7月5日、岡山労働局・岡山労働基準監督署が、建設会社と同社の営業部長を書類送検しました。従業員が工事現場で足場の解体作業中、ベトナム人技能実習生に対し、長さ約90センチのパイプ状の部品を投げ渡したところ、技能実習生の顔に当たり、唇を4針縫い、歯を1本折るなど休業4日以上を要する負傷をしました。それにもかかわらず、労働基準監督署に労働者死傷病報告書を提出しなかったとして、労働安全衛生法第100条、労働安全衛生規則第97条に違反した疑いによります。
労働安全衛生規則第97条には、次のように定められています。
事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第二十三号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
労働安全衛生規則第97条(労働者死傷病報告)
■チェーンソーによる伐採業務で死亡事故
7月5日、熊本労働局・菊池労働基準監督署が、建設会社と同社の社長を書類送検しました。法面工事でチェーンソーによる立木の伐採していたところ、切り倒した直径30センチの木が跳ね上がり、頭にあたって労働者が死亡しました。会社は、労働者に対し、特別教育を行わないまま、チェーンソーによる伐採業務に従事させたとして、労働安全衛生法第59条第3項、労働安全衛生規則第36条第8号に違反した疑いによります。
労働安全衛生法第59条第3項、労働安全衛生規則第36条第8号には、次のように定められています。
事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。
労働安全衛生法第59条第3項(安全衛生教育)
法第五十九条第三項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。
八 チェーンソーを用いて行う立木の伐木、かかり木の処理又は造材の業務
労働安全衛生規則第36条第8号(特別教育を必要とする業務)
■技能実習生がプレス機械で指4本を切断
7月14日、広島労働局・広島北労働基準監督署が、金属部品製造会社と同社のマネジャーを書類送検しました。20代の技能実習生が工場で、金属プレス機械の金型を交換していたところ、作動したプレス機械に左手を挟まれ、4本の指を切断しました。機械のキースイッチのキーを作業主任者に保管させず、鍵を通常作業モードに差し込んだままに作業させたとして、労働安全衛生法第14条、労働安全衛生規則第134条に違反した疑いによります。
労働安全衛生規則第134条には、次のように定められています。
事業者は、プレス機械作業主任者に、次の事項を行なわせなければならない。
一 プレス機械及びその安全装置を点検すること。
二 プレス機械及びその安全装置に異常を認めたときは、直ちに必要な措置をとること。
三 プレス機械及びその安全装置に切替えキースイツチを設けたときは、当該キーを保管すること。
四 金型の取付け、取りはずし及び調整の作業を直接指揮すること。
労働安全衛生規則第134条(プレス機械作業主任者の職務)