2023年10月の労災ニュース:新たな死傷者数、主な書類送検事案
10月期に認定された死者数39人、死傷者数1万1592人
11月17日、厚労省が10月集計分の労働災害発生状況を公表し、10月11日~11月7日(以下「10月期」)までの1ヶ月で、2023年1月以降10月末までの労災事故について、新たに死者数39人、死傷者数1万1592人が明らかになりました。
累計で2023年の労災死者数は現在545人となっており、前年の同時期の584人より6.7%減少しています。
一方で死傷者数は9万9353人と、前年同時期の9万6830人より2523人、2.6%増加しています。
10月期の主な書類送検事案
◾️70代の労働者が墜落で死亡
10月18日、大阪労働局・茨木労働基準監督署が、解体工事業の個人事業主を書類送検しました。木造2階建て建物の解体工事現場で、屋根の瓦や下地材を落とす作業をしていた70代の労働者が、梁だけになった高さ6.13メートルの屋根から墜落して死亡しました。墜落制止用器具を使用させるなどの墜落防止措置を講じなかったとして、労働安全衛生法第21条、労働安全衛生規則第518条に違反した疑いによります。
労働安全衛生規則第518条には、次のように定められています。
事業者は、高さが二メートル以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行なう場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない。
2 事業者は、前項の規定により作業床を設けることが困難なときは、防網を張り、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。
労働安全衛生規則第518条(作業床の設置等)
■クレーンの解体作業中、労働者が頭を挟まれて死亡
10月25日、長野労働局・松本労働基準監督署が、建設会社と同社の現場代理人を書類送検しました。同社が元請けとして施工する工事現場で、クレーンの解体作業の際に、ハンマーでクレーンを連結・固定している金属ピンを取り外したところ、クレーンのアームが落下して労働者が頭を挟まれて死亡しました。作業日ごとの現場の巡視を少なくとも3日間行わなかったとして、労働安全衛生法第30条、労働安全衛生規則第637条に違反した疑いによります。
労働安全衛生規則第637条には、次のように定められています。
特定元方事業者は、法第三十条第一項第三号の規定による巡視については、毎作業日に少なくとも一回、これを行なわなければならない。
2 関係請負人は、前項の規定により特定元方事業者が行なう巡視を拒み、妨げ、又は忌避してはならない。
労働安全衛生規則第637条(作業場所の巡視)
◾️外国人技能実習生が骨折したにもかかわらず、労災かくし
10月27日、岡山労働局・岡山労働基準監督署により、鉄鋼加工会社を書類送検、同社の社長を逮捕し、身柄を送検しました。取引先の工場で、外国人技能実習生が溶接作業をしていたところ、鋼板が倒れて右足の甲を骨折しました。4日以上の休業を要したにもかかわらず、労働基準監督署に労働者死傷病報告書を提出しなかったとして、労働安全衛生法第100条、労働安全衛生規則第97条に違反した疑いによります。
労働安全衛生規則第97条には、次のように定められています。
事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第二十三号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
2 前項の場合において、休業の日数が四日に満たないときは、事業者は、同項の規定にかかわらず、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの期間における当該事実について、様式第二十四号による報告書をそれぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
労働安全衛生規則第97条(労働者死傷病報告)