2023年9月の労災ニュース:新たな死傷者数、主な書類送検事案

9月期に認定された死者数78人、死傷者数1万1630人

 10月19日、厚労省が9月集計分の労働災害発生状況を公表し、9月8日~10月10日(以下「9月期」)までの1ヶ月で、2023年1月以降9月末までの労災事故について、新たに死者数78人、死傷者数1万1630人が明らかになりました。

 累計で2023年の労災死者数は現在506人となっており、前年の同時期の515人より1.7%減少しています。

 一方で死傷者数は8万7761人と、前年同時期の8万5544人より2217人、2.6%増加しています。

9月期の主な書類送検事案

◾️70代の労働者が鉄骨に挟まれて死亡

 9月14日、高知労働局・高知労働基準監督署が、金属加工会社と同社の代表を書類送検しました。70代の労働者が工場で、天井クレーンを使って重量1.1トンの鉄骨を運んでいたところ、鉄骨の下敷きとなって死亡しました。法定の技能講習を修了していなかったにもかかわらず、1トン以上の荷物のクレーン作業を行わせたとして、労働安全衛生法第61条、労働安全衛生法施行令第20条に違反した疑いによります。

 労働安全衛生法第61条には、次のように定められています。

 事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う当該業務に係る技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない。

2 前項の規定により当該業務につくことができる者以外の者は、当該業務を行なつてはならない。

3 第一項の規定により当該業務につくことができる者は、当該業務に従事するときは、これに係る免許証その他その資格を証する書面を携帯していなければならない。

4 職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)第二十四条第一項(同法第二十七条の二第二項において準用する場合を含む。)の認定に係る職業訓練を受ける労働者について必要がある場合においては、その必要の限度で、前三項の規定について、厚生労働省令で別段の定めをすることができる。

労働安全衛生法第61条(就業制限)

■60代の労働者が重機ごと埋まり死亡

 10月2日、宮崎労働局・延岡労働基準監督署が、土木工事会社と同社の社長を書類送検しました。林道の復旧工事現場で、高さ約4メートル、幅約10メートルにわたってのり面が崩壊し、60代の労働者が重機ごと埋まり死亡しました。高さ2メートル以上ののり面の掘削であるにもかかわらず、作業主任者が現場指揮をしなかったとして、労働安全衛生法第14条、労働安全衛生法施行令第6条、労働安全衛生規則第360条に違反した疑いによります。

 労働安全衛生規則第360条には、次のように定められています。

 事業者は、地山の掘削作業主任者に、次の事項を行わせなければならない。

一 作業の方法を決定し、作業を直接指揮すること。

二 器具及び工具を点検し、不良品を取り除くこと。

三 要求性能墜落制止用器具等及び保護帽の使用状況を監視すること。

労働安全衛生規則第360条(地山の掘削作業主任者の職務)

◾️70代の労働者が転落死

 10月3日、埼玉労働局・川口労働基準監督署が、貨物自動車運送会社と同社の事業部長を書類送検しました。同社の鉄骨平屋の倉庫で、70代の労働者が10トントラック用のタイヤを高さ4.9メートルの中2階で運搬中に、転落し死亡しました。囲いや手すりを設置するなどの墜落防止措置を講じなかったとして、労働安全衛生法第21条、労働安全衛生規則第519条に違反した疑いによります。

 労働安全衛生規則第519条には、次のように定められています。

 事業者は、高さが二メートル以上の作業床の端、開口部等で墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には、囲い、手すり、覆

おお

い等(以下この条において「囲い等」という。)を設けなければならない。

2 事業者は、前項の規定により、囲い等を設けることが著しく困難なとき又は作業の必要上臨時に囲い等を取りはずすときは、防網を張り、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。

労働安全衛生規則第519条(作業床の設置等)

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