2023年3月の労災ニュース:新たな死傷者数、主な書類送検事案
3月期に認定された死者数67人、死傷者数1万3975人
4月20日、厚労省が3月集計分の労働災害発生状況を公表し、3月8日~4月7日(以下「3月期」)までの1ヶ月で、2023年1月以降3月末までの労災事故について、新たに死者数67人、死傷者数1万3975人が明らかになりました。
累計で2023年の労災死者数は現在152人となっており、前年の同時期の176人より13.6%減少しています。
一方で死傷者数は3万3020人と、前年同時期の3万2302人より718人、2.2%増加しています。うち主に感染症による労災は、今年度3月期は1万1472人、前年度同時期は1万725人ですが、それを省くと29人程度減少しています。
3月期の主な書類送検事案
■20代の労働者が転落し、埋もれて死亡
3月8日、北海道労働局苫小牧労働基準監督署が、廃棄物処理会社と同社の現場責任者を書類送検しました。20代の労働者が、発電所において、石炭灰貯槽タンクの上に堆積した約3メートルの石炭灰の上に乗り、灰を吸引する清掃作業をしていた際に、転落して灰に埋もれて死亡しました。安全対策を講じていなかったとして、労働安全衛生法第21条、労働安全衛生規則第532条の2に違反した疑いによります。
労働安全衛生規則第532条の2には、次のように定められています。
事業者は、ホツパー又はずりびんの内部その他土砂に埋没すること等により労働者に危険を及ぼすおそれがある場所で作業を行わせてはならない。ただし、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等当該危険を防止するための措置を講じたときは、この限りでない。
労働安全衛生規則第532条の2(ホツパー等の内部における作業の制限)
■「自宅で転倒した」などと虚偽の説明をさせ、労災かくし
3月23日、山梨労働局・甲府労働基準監督署が、2次下請けの土木工事業の個人事業主と、1次下請けの下水道工事会社の代表取締役、工事部課長を書類送検しました。20代の労働者が、下水道の耐震補強工事の現場で、汚水管に水をせき止める器具を取り付ける作業の際に、器具が外れてぶつかり、胸や顎の骨を折るなどの重傷を負ったにもかかわらず、共謀して労働基準監督署に労働者死傷病報告書を提出しなかったとして、労働安全衛生法第100条、労働安全衛生規則第97条に違反した疑いによります。3人は、「自宅で転倒した」などと虚偽の説明を、病院で労働者にさせたといいます。
労働安全衛生規則第97条には、次のように定められています。
事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第二十三号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
2 前項の場合において、休業の日数が四日に満たないときは、事業者は、同項の規定にかかわらず、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの期間における当該事実について、様式第二十四号による報告書をそれぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
労働安全衛生規則第97条(労働者死傷病報告)
■ベトナム人技能実習生ら労働者10人が目を負傷
3月28日、神奈川労働局・相模原労働基準監督署が、総菜製造会社と同社の取締役を書類送検しました。ベトナム人技能実習生や労働者10人が、同社の工場で紫外線殺菌機を使用してハムの除菌作業を行う際に、目の痛みが生じる負傷をしました。紫外線の漏出防止措置などを行わなかったとして、労働安全衛生法第22条、労働安全衛生規則第576条に違反した疑いによります。
労働安全衛生規則第576条には、次のように定められています。
事業者は、有害物を取り扱い、ガス、蒸気又は粉じんを発散し、有害な光線又は超音波にさらされ、騒音又は振動を発し、病原体によつて汚染される等有害な作業場においては、その原因を除去するため、代替物の使用、作業の方法又は機械等の改善等必要な措置を講じなければならない。
労働安全衛生規則第576条(有害原因の除去)