2022年8月の労災ニュース:新たな死傷者数、主な書類送検事案

8月期に認定された死者数67人、死傷者数2万4017人

 9月20日、厚労省が8月集計分の労働災害発生状況を公表し、8月9日~9月7日(以下「8月期」)までの1ヶ月で、2022年1月以降8月末までの労災事故について、新たに死者数67人、死傷者数2万4017人が明らかになりました。

 累計で2022年の労災死者数は現在462人となっており、前年の同時期の465人より0.6%減少しています。

 一方で死傷者数は12万2198人と、前年同時期の8万4713人より3万7485人、44.2%増加しています。うち主に感染症による労災は、今年度8月期は4万9021人、前年度同時期は1万2175人ですが、それを省くと639人程度増加しています。

8月期の主な書類送検事案

■トルコ国籍の労働者が解体工事現場で屋根から墜落し死亡

 8月1日、愛知労働局・江南労働基準監督署が、建築工事会社と同社の取締役を書類送検しました。トルコ国籍の労働者が、工場の解体工事現場で、高さ約6メートルの屋根から墜落し、頭部外傷により死亡しました。解体作業の作業主任者として選任した取締役が労働者に直接指揮していなかったとして、労働安全衛生法第14条、労働安全衛生規則第517条の5に違反した疑いによります。

 労働安全衛生規則第517条の5には、次のように定められています。

 事業者は、建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者に、次の事項を行わせなければならない。

一 作業の方法及び労働者の配置を決定し、作業を直接指揮すること。

二 器具、工具、要求性能墜落制止用器具等及び保護帽の機能を点検し、不良品を取り除くこと。

三 要求性能墜落制止用器具等及び保護帽の使用状況を監視すること。

労働安全衛生規則第517条の5(建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者の職務)

■プレス機械に挟まれ指を切断

 8月12日、大阪労働局・茨木労働基準監督署が、プレス加工金属製造会社と同社の代表取締役を書類送検しました。労働者が、同社工場においてプレス機械を用いた作業をしていた際に、人差し指を切断しました。労働者の身体の一部がプレス機械に挟まれることを防止する安全囲いなどを設けなかったとして、労働安全衛生法第20条、労働安全衛生規則第131条に違反した疑いによります。

 労働安全衛生規則第131条には、次のように定められています。

 事業者は、プレス機械及びシヤー(以下「プレス等」という。)については、安全囲いを設ける等当該プレス等を用いて作業を行う労働者の身体の一部が危険限界に入らないような措置を講じなければならない。ただし、スライド又は刃物による危険を防止するための機構を有するプレス等については、この限りでない。

2 事業者は、作業の性質上、前項の規定によることが困難なときは、当該プレス等を用いて作業を行う労働者の安全を確保するため、次に定めるところに適合する安全装置(手払い式安全装置を除く。)を取り付ける等必要な措置を講じなければならない。

一 プレス等の種類、圧力能力、毎分ストローク数及びストローク長さ並びに作業の方法に応じた性能を有するものであること。

二 両手操作式の安全装置及び感応式の安全装置にあっては、プレス等の停止性能に応じた性能を有するものであること。

三 プレスブレーキ用レーザー式安全装置にあっては、プレスブレーキのスライドの速度を毎秒十ミリメートル以下とすることができ、かつ、当該速度でスライドを作動させるときはスライドを作動させるための操作部を操作している間のみスライドを作動させる性能を有するものであること。

3 前二項の措置は、行程の切替えスイツチ、操作の切替えスイツチ若しくは操作ステーシヨンの切替えスイツチ又は安全装置の切替えスイツチを備えるプレス等については、当該切替えスイツチが切り替えられたいかなる状態においても講じられているものでなければならない。

労働安全衛生規則第131条(プレス等による危険の防止)

■機械に頭部を挟まれ重体

 8月18日、大阪労働局・北大阪労働基準監督署が、機械製造会社と同社の安全管理責任者を書類送検しました。納品先の金属製品加工工場において、同僚とNC旋盤の調整作業中だった労働者が、お互いの姿が見えない状況下で同僚が動かした機械に頭部を挟まれて重体となりました。機械の運転開始時には、合図をするものを指名して、一定の合図を定め、関係労働者に対して合図を行わせなければなりません。それにもかかわらず、合図を定めるなどの措置を講じなかったとして、労働安全衛生法第20条、労働安全衛生規則第104条に違反した疑いによります。

 労働安全衛生規則第104条には、次のように定められています。

 事業者は、機械の運転を開始する場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、一定の合図を定め、合図をする者を指名して、関係労働者に対し合図を行なわせなければならない。

2 労働者は、前項の合図に従わなければならない。

労働安全衛生規則第104条(運転開始の合図)

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