2025年9月の労災ニュース:新たな死傷者数、主な書類送検事案
9月期に認定された死者数55人、死傷者数1万1644人
10月31日、厚労省が9月集計分の労働災害発生状況を公表し、9月9日~10月7日(以下「9月期」)までの1ヶ月で、2025年1月以降9月末までの労災事故について、新たに死者数55人、死傷者数1万1644人が明らかになりました。
累計で2025年の労災死者数は現在475人となっており、前年の同時期の508人より33人、6.5%減少しています。
一方で死傷者数は8万7407人と、前年同時期の8万8421人より1014人、1.1%減少しています。
9月期の主な書類送検事案
◾️73歳の労働者が右足をひかれて死亡
9月18日、鹿児島労働局・鹿屋労働基準監督署が、製材業・木材加工業の個人事業主を書類送検しました。雑木の剪定で発生した枝を私有地から製材所まで運搬する作業の際に、事業主が運転する最大荷重2.3トンのフォークリフトのフォークに枝をスリングベルトで束ねて巻き付けてつり上げ、73歳の労働者が揺れないように手で押さえながらフォークリフトの左前方を歩いて町道を移動していたところ、何らかの理由で労働者が転倒し、フォークリフトに右足をひかれ、その後死亡しました。最大荷重1トン以上のフォークリフトにもかかわらず、法定の技能講習の修了者等の資格のない者が運転した疑い、荷の積み込みや積み降ろしなどの主たる用途である荷役作業以外にフォークリフトを使用したとして、労働安全衛生法第61条、労働安全衛生法施行令第20条に違反した疑いによります。
労働安全衛生法第61条には、次のように定められています。
事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う当該業務に係る技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない。
2 前項の規定により当該業務につくことができる者以外の者は、当該業務を行なつてはならない。
3 第一項の規定により当該業務につくことができる者は、当該業務に従事するときは、これに係る免許証その他その資格を証する書面を携帯していなければならない。
4 職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)第二十四条第一項(同法第二十七条の二第二項において準用する場合を含む。)の認定に係る職業訓練を受ける労働者について必要がある場合においては、その必要の限度で、前三項の規定について、厚生労働省令で別段の定めをすることができる。
労働安全衛生法第61条(就業制限)
◾️20代の労働者が下敷きになり死亡
9月29日、福岡労働局・行橋労働基準監督署が、建設会社の代表者と同社の現場責任者を書類送検しました。工場で、ベルトコンベヤーの取替工事のために、移動式クレーンを使用して、ベルト(重量約4トン・幅90センチ)をつり上げていたところ、吊り具が外れて1.5メートルの高さからベルトが落下し、ベルトと通路の手すりに労働者2名が挟まれ、うち20代の労働者1名が死亡しました。物体の落下による危険があるにもかかわらず、防網の設備を設け、立入区域を設定するなどの危険防止措置を講じなかったとして労働安全衛生法第21条、労働安全衛生規則第537条に違反した疑いによります。
労働安全衛生規則第537条には、次のように定められています。
事業者は、作業のため物体が落下することにより、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、防網の設備を設け、立入区域を設定する等当該危険を防止するための措置を講じなければならない。
労働安全衛生規則第537条(物体の落下による危険の防止)

