2025年6月の労災ニュース:新たな死傷者数、主な書類送検事案
6月期に認定された死者数45人、死傷者数10592人
8月26日、厚労省が6月集計分の労働災害発生状況を公表し、6月10日~7月7日(以下「6月期」)までの1ヶ月で、2025年1月以降6月末までの労災事故について、新たに死者数45人、死傷者数10592人が明らかになりました。
累計で2025年の労災死者数は現在286人となっており、前年の同時期の299人より4.3%減少しています。
一方で死傷者数は5万2554人と、前年同時期の5万4134人より1580人、2.9%減少しています。
6月期の主な書類送検事案
◾️80代の労働者がローラーに巻き込まれて左足の全指を切断
6月11日、長崎労働局・諫早労働基準監督署が、廃棄物処理会社と同社の工場長を書類送検しました。石こうボード破砕施設で、80代の労働者が廃石こうボードを粉砕機に投入していた際に、粉砕機の開口部に転落し、機械のローラーに巻き込まれ左足の全部の指を切断しました。粉砕機の開口部に囲いや柵などを設ける墜落防止措置を講じなかったとして、労働安全衛生法第20条、労働安全衛生規則第142条に違反した疑いによります。
労働安全衛生規則第142条には、次のように定められています。
事業者は、粉砕機又は混合機(第百三十条の五第一項の機械を除く。)の開口部から転落することにより労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、蓋、囲い、高さが九十センチメートル以上の柵等を設けなければならない。ただし、蓋、囲い、柵等を設けることが作業の性質上困難な場合において、要求性能墜落制止用器具を使用させる等転落の危険を防止するための措置を講じたときは、この限りでない。
2 事業者は、前項の開口部から可動部分に接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、蓋、囲い等を設けなければならない。
3 労働者は、第一項ただし書の場合において、要求性能墜落制止用器具等の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。
労働安全衛生規則第142条(転落等の危険の防止)
◾️20代派遣労働者がつり荷の下敷きになり死亡
6月27日、大阪労働局・淀川労働基準監督署が、電気通信工事会社と同社の係長を書類送検しました。工事現場にて、道路沿いにある直径25センチメートル・高さ約10メートルの照明ポールを交換するために、移動式クレーンを用いた取り付け作業をしていたところ、つり上げていた照明ポールがずれて落下し、下にいた20代の派遣労働者の頭部に直撃し、死亡しました。1か所で玉掛けした荷をクレーンでつり上げているにもかかわらず、下に労働者を立ち入らせたとして、労働安全衛生法第20条、クレーン等安全規則第74条の2に違反した疑いによります。
クレーン等安全規則第74条の2には、次のように定められています。
事業者は、移動式クレーンに係る作業を行う場合であつて、次の各号のいずれかに該当するときは、当該作業場において作業に従事する者がつり上げられている荷(第六号の場合にあつては、つり具を含む。)の下に立ち入ることについて、禁止する旨を見やすい箇所に表示することその他の方法により禁止しなければならない。
一 ハッカーを用いて玉掛けをした荷がつり上げられているとき。
二 つりクランプ一個を用いて玉掛けをした荷がつり上げられているとき。
三 ワイヤロープ等を用いて一箇所に玉掛けをした荷がつり上げられているとき(当該荷に設けられた穴又はアイボルトにワイヤロープ等を通して玉掛けをしている場合を除く。)。
四 複数の荷が一度につり上げられている場合であつて、当該複数の荷が結束され、箱に入れられる等により固定されていないとき。
五 磁力又は陰圧により吸着させるつり具又は玉掛用具を用いて玉掛けをした荷がつり上げられているとき。
六 動力下降以外の方法により荷又はつり具を下降させるとき。
クレーン等安全規則第74条の2(立入禁止)