2025年3月の労災ニュース:新たな死傷者数、主な書類送検事案
3月期に認定された死者数49人、死傷者数9646人
4月30日、厚労省が3月集計分の労働災害発生状況を公表し、3月8日~4月4日(以下「3月期」)までの1ヶ月で、2025年1月以降3月末までの労災事故について、新たに死者数49人、死傷者数9646人が明らかになりました。
累計で2025年の労災死者数は現在142人となっており、前年の同時期の124人より14.5%増加しています。
一方で死傷者数は2万2158人と、前年同時期の2万1655人より503人、2.3%増加しています。
3月期の主な書類送検事案
◾️70代の労働者が倒木に激突され死亡
3月10日、岩手労働局・二戸労働基準監督署が、林業会社と同社の現場責任者を書類送検しました。山林の立木皆伐作業の現場で、チェーンソーによる立木の伐倒のため、くさびを打ち込んでいたところ、予定とは異なる方向に木が倒れ、作業箇所の付近を通過していた70代の労働者が背後から激突されて死亡しました。あらかじめ定めた伐倒時の合図を行わせず、他の労働者が避難したことを確認しないまま伐倒させたとして、労働安全衛生法第21条、労働安全衛生規則第479条に違反した疑いによります。
労働安全衛生規則第479条には、次のように定められています。
事業者は、伐木の作業を行なうときは、伐倒について一定の合図を定め、当該作業に関係がある労働者に周知させなければならない。
2 事業者は、伐木の作業を行う場合において、当該立木の伐倒の作業に従事する労働者以外の者(以下この条及び第四百八十一条第二項において「作業に従事する他の者」という。)に、伐倒により危険を生ずるおそれのあるときは、当該立木の伐倒の作業に従事する労働者に、あらかじめ、前項の合図を行わせ、作業に従事する他の者が避難したことを確認させた後でなければ、伐倒させてはならない。
3 前項の伐倒の作業に従事する労働者は、同項の危険を生ずるおそれのあるときは、あらかじめ、合図を行い、作業に従事する他の者が避難したことを確認した後でなければ、伐倒してはならない
労働安全衛生規則第479条(伐倒の合図)
◾️外国人労働者がドラグ・ショベルにはねられ死亡
3月11日、茨城労働局・筑西労働基準監督署が、解体工事会社と同社の社長を書類送検しました。資材置き場にて、土を盛る作業に使っていたドラグ・ショベルを後退させたところ、トラックの誘導や盛り土の木の根の除去をしていた外国人労働者がはねられて死亡しました。ドラグ・ショベルに接触する恐れのある場所に、誘導者を配置せず、労働者を立ち入らせたとして、労働安全衛生法第20条第1号 、労働安全衛生規則第158条第1項に違反した疑いによります。
労働安全衛生規則第158条には、次のように定められています。
事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行うときは、運転中の車両系建設機械に接触することにより危険が生ずるおそれのある箇所に当該作業場において作業に従事する者が立ち入ることについて、禁止する旨を見やすい箇所に表示することその他の方法により禁止しなければならない。ただし、誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させるときは、この限りでない。
2 前項の車両系建設機械の運転者は、同項ただし書の誘導者が行う誘導に従わなければならない。
労働安全衛生規則第158条(接触の防止)
◾️20代の技能実習生が転落し頭を挟まれ死亡
3月12日、神奈川労働局・横浜北労働基準監督署が、土木建築工事会社と同社の工事課長を書類送検しました。生産緑地の整地工事現場にて、ローラー車を操作して転圧作業をしていたベトナム国籍の20代の技能実習生が、ローラー車ごと1.2メートル下の隣地に転落し、地面とローラー車の間に頭部を挟まれ死亡しました。ローラー車の使用時に誘導員を配置して転倒防止措置を講じなかったとして、労働安全衛生法第20条、労働安全衛生規則第157条に違反した疑いによります。
労働安全衛生法第157条には、次のように定められています。
事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行うときは、車両系建設機械の転倒又は転落による労働者の危険を防止するため、当該車両系建設機械の運行経路について路肩の崩壊を防止すること、地盤の不同沈下を防止すること、必要な幅員を保持すること等必要な措置を講じなければならない。
2 事業者は、路肩、傾斜地等で車両系建設機械を用いて作業を行う場合において、当該車両系建設機械の転倒又は転落により労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させなければならない。
3 前項の車両系建設機械の運転者は、同項の誘導者が行う誘導に従わなければならない。
労働安全衛生法第157条(転落等の防止等)