2024年5月の労災ニュース:新たな死傷者数、主な書類送検事案
5月期に認定された死者数47人、死傷者数10854人
6月18日、厚労省が5月集計分の労働災害発生状況を公表し、5月8日~6月7日(以下「5月期」)までの1ヶ月で、2024年1月以降5月末までの労災事故について、新たに死者数47人、死傷者数10854人が明らかになりました。
累計で2024年の労災死者数は現在234人となっており、前年の同時期の244人より4.1%減少しています。
一方で死傷者数は42703人と、前年同時期の42201人より502人、1.2%増加しています。
5月期の主な書類送検事案
◾️60代の労働者が転落死
5月17日、福島労働局・郡山労働基準監督署が、建設会社と同社の代表取締役を書類送検しました。木造2階建て住宅の補修工事現場で、60代の労働者が住宅2階の屋根に設置されている高さ6メートル以上の天窓まで登るため、車庫の屋根から住宅の1階の屋根に移ろうとしたところ、地上約3メートルの高さから転落死しました。安全に昇降するための設備を設けなかったとして、労働安全衛生法第21条、労働安全衛生規則第526条に違反した疑いによります。
労働安全衛生規則第526条には、次のように定められています。
事業者は、高さ又は深さが一・五メートルをこえる箇所で作業を行なうときは、当該作業に従事する労働者が安全に昇降するための設備等を設けなければならない。ただし、安全に昇降するための設備等を設けることが作業の性質上著しく困難なときは、この限りでない。
2 前項の作業に従事する労働者は、同項本文の規定により安全に昇降するための設備等が設けられたときは、当該設備等を使用しなければならない。
労働安全衛生規則第526条(昇降するための設備の設置等)
◾️20代の労働者が土砂に埋まって死亡
5月23日、香川労働局・坂出労働基準監督署が、土木工事会社と同社の現場責任者を書類送検しました。水道管の設置工事のため、町道に掘られた深さ約2.5メートルの作業現場で、20代の労働者が管を接続していたところ、崩れてきた土砂と水道管の間に挟まれて死亡しました。掘られた穴の側面に板や支えを設置するなど土砂の崩壊防止措置を講じなかったとして、労働安全衛生法第21条、労働安全衛生規則第534条に違反した疑いによります。
労働安全衛生規則第534条には、次のように定められています。
事業者は、地山の崩壊又は土石の落下により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、当該危険を防止するため、次の措置を講じなければならない。
一 地山を安全なこう配とし、落下のおそれのある土石を取り除き、又は擁壁、土止め支保工等を設けること。
二 地山の崩壊又は土石の落下の原因となる雨水、地下水等を排除すること。
労働安全衛生規則第534条(地山の崩壊等による危険の防止)
◾️10代の労働者が電車にはねられて死亡
6月6日、富山労働局・富山労働基準監督署が、鉄道会社と同社の技術部長、テクニカルセンター所長、保線グループ長を書類送検しました。線路の保守作業にあたっていた10代の労働者が電車にはねられて死亡しました。現場には作業中に電車の接近を知らせる監視人が2人いましたが、保守作業を兼務しており、本来の監視業務に専念できていなかったといいます。 監視装置の設置、または監視人の配置による車両との接触防止措置を講じなかったとして、労働安全衛生法第21条、労働安全衛生規則第554条に違反した疑いによります。
労働安全衛生規則第554条には、次のように定められています。
事業者は、軌道上又は軌道に近接した場所で作業を行なうときは、労働者と当該軌道を運行する車両とが接触する危険を防止するため、監視装置を設置し又は監視人を配置しなければならない。
労働安全衛生規則第554条(軌道内等の作業における監視の措置)