2023年2月の労災ニュース:新たな死傷者数、主な書類送検事案

2月期に認定された死者数11人、死傷者数1万5795人

 3月16日、厚労省が2月集計分の労働災害発生状況を公表し、2月8日~3月7日(以下「2月期」)までの1ヶ月で、2022年1月以降12月末までの労災事故について、新たに死者数11人、死傷者数1万5795人が明らかになりました。

 累計で2022年の労災死者数は現在758人となっており、前年の同時期の831人より8.8%減少しています。

 一方で死傷者数は27万5733人と、前年同時期の14万6856人より12万8877人、87.8%増加しています。うち主に感染症による労災は、今年度2月期は14万7823人、前年度同時期は2万255人ですが、それを省くと1309人程度増加しています。

 また、2月期の1ヶ月で、2023年1月以降2月末までの労災事故について、新たに死者数53人、死傷者数1万3077人が明らかになりました。

 累計で2023年の労災死者数は現在85人となっており、前年の同時期の128人より33.6%減少しています。

 一方で死傷者数は1万9045人と、前年同時期の1万6500人より2545人、15.4%増加しています。うち主に感染症による労災は、2023年度2月期は6924人、2022年度同時期は2643人ですが、それを省くと1736人程度減少しています。

2月期の主な書類送検事案

■70代の警備員が骨折、警備会社と建設会社が共謀して労災隠し

 2月16日、奈良労働局・葛城労働基準監督署が、警備会社の代表、建設会社の社長及び取締役を書類送検しました。建設会社が請け負ったケーブル設置工事の現場において、警備会社の70代の警備員が、立ち木に引っかかったケーブルを外す作業をしていたところ、弾みで後方にあった石像に激突して右肋骨を骨折し、少なくとも50日の休業を要しました。それにもかかわらず、3人は共謀して労働基準監督署に労働者死傷病報告書を提出しなかったとして、労働安全衛生法第100条、労働安全衛生規則第97条に違反した疑いによります。

 労働安全衛生規則第97条には、次のように定められています。

 事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第二十三号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

2 前項の場合において、休業の日数が四日に満たないときは、事業者は、同項の規定にかかわらず、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの期間における当該事実について、様式第二十四号による報告書をそれぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

労働安全衛生規則第97条(労働者死傷病報告)

■20代の労働者が機械の回転軸に巻き込まれて窒息死

 2月21日、広島労働局・広島北労働基準監督署が、食品製造販売会社と同社の社長を書類送検しました。同社の工場において、20代の労働者が餃子の皮を製造する機械を点検しようと前屈みになったところ、頭にかぶっていた衛生用の帽子を機械の回転軸に巻き込まれて窒息死しました。機械の回転軸に接触を防ぐ覆いなどを設けなかったとして、労働安全衛生法第20条、労働安全衛生規則第101条に違反した疑いによります。

 労働安全衛生規則第101条には、次のように定められています。

 事業者は、機械の原動機、回転軸、歯車、プーリー、ベルト等の労働者に危険を及ぼすおそれのある部分には、覆おおい、囲い、スリーブ、踏切橋等を設けなければならない。

2 事業者は、回転軸、歯車、プーリー、フライホイール等に附属する止め具については、埋頭型のものを使用し、又は覆おおいを設けなければならない。

3 事業者は、ベルトの継目には、突出した止め具を使用してはならない。

4 事業者は、第一項の踏切橋には、高さが九十センチメートル以上の手すりを設けなければならない。

5 労働者は、踏切橋の設備があるときは、踏切橋を使用しなければならない。

労働安全衛生規則第101条(原動機、回転軸等による危険の防止)

■70代の労働者が屋根を踏み抜いて墜落死

 2月24日、兵庫労働局・加古川労働基準監督署が、建設会社と同社の代表取締役を書類送検しました。70代の労働者が、同社の工場のスレート製屋根の雨漏りの補修作業をしていたところ、屋根を踏み抜いて約8メートル下に転落死しました。幅30センチ以上の歩み板を設置し、防網を張るなどのスレート屋根の踏み抜き防止を講じなかったとして、労働安全衛生法第21条、労働安全衛生規則第524条に違反した疑いによります。

 労働安全衛生規則第524条には、次のように定められています。

 事業者は、スレート、木毛板等の材料でふかれた屋根の上で作業を行なう場合において、踏み抜きにより労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、幅が三十センチメートル以上の歩み板を設け、防網を張る等踏み抜きによる労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。

労働安全衛生規則第524条(スレート等の屋根上の危険の防止)

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